職場からの帰宅後、ようやくひと息つく私時間。
窓辺に腰かけて、ふと見上げた夕焼け空に、心の中でそっと語りかける一言。
「今日も些細な幸せをありがとう」
あわただしい一日の終わりに、こうして空を見つめられるだけで、私はもう十分に恵まれているのかもしれません。
今日は 7月7日、七夕。
子どものころ、色とりどりの短冊に願いごとを書いては、星に祈った日の記憶が蘇ります。
願いはきっと通じて、叶うものだと信じていた、あの頃のまっすぐな心。
そして、七夕といえば思い出すのは──
織姫と彦星のロマンス。
年に一度、天の川を渡ってめぐり逢う、星と星の物語です。
天帝の娘・織姫(ベガ)は、美しい布を織る働き者の天女。
天の川の向こう岸に住む彦星(アルタイル)は、誠実な牛飼いの青年。
ふたりは出会った瞬間、深く恋に落ち、幸せな日々を過ごしますが、
仕事を怠けてしまったことで天帝の怒りを買い、天の川で引き離されてしまいます。
しかし、あまりに悲しむふたりの姿に心を動かされた天帝はこう告げました。
「年に一度、七月七日の夜だけ、空が晴れていれば会わせてやろう」
そしてその夜、空にはカササギたちが翼で橋をかけ、ふたりを再び結んだのです。
これは、ただの昔話ではありません。
まるで、宇宙から地球に降り立ったスターシードたちの記憶のようでもあります。
遠い銀河でひとつだった魂が、成長のためにふたつに分かれ、
別々の星(ベガとアルタイル)へと旅立つ――
たとえ記憶を忘れても、魂はずっと響き合っている。
七夕の夜、胸がざわつくのは、その“星の記憶”が目覚めるサインかもしれません。
ひとつの魂が
光となってほどけるとき星の名を持つふたつの存在が
それぞれの使命を抱えて旅立った時と空間を越えて
彼らが出会う夜地上では短冊が揺れ
天上では橋がかかる織りなされた想いは
言葉ではなく
振動で届くすれ違うだけの銀河のなかで
ほんとうに出会えることそれが奇跡ではなく
宇宙の約束だったと
あなたも思い出す
私の故郷、愛知県一宮市は“織物の町”として栄えてきた場所です。
毎年開かれる「一宮七夕まつり」は全国的にも有名で、
7月になると、真清田神社へと続く商店街のアーケードは
大掛かりな七夕飾りで彩られ、屋台が並び、たくさんの人で賑わいます。
星と人、過去と今、そして未来がつながるような夜。
私はこの町で、そんな七夕の空を見上げて育ちました。
どこにいても。たとえ見上げる空が違っても。
あなたの願いは、宇宙に届いている。
今年の七夕は、静かに心の声に耳を澄ませてみてください。
きっと魂の奥で、再会を待つ誰かが、あなたに手を伸ばしているはずです。
「今日も、些細な幸せをありがとう」
星の記憶とともに、この灯火を胸に抱いて──。