海外から商品を仕入れて販売する──。
言葉にすればシンプルですが、実際の輸出入の現場では「商品そのもの」だけではなく、安全性・法令対応・品質表示までトータルで把握しなければ、ビジネスは成り立ちません。
私がこれまでの20年で痛感してきたのは、
“小さな見落としが、大きなトラブルに直結する”
という輸出入の厳しい現実でした。
この記事では、長年の実務経験から学んだ商品安全と品質表示に関する本質的なポイントをお伝えします。
1.商品を輸入するということは、法律を輸入するということ
輸入品には、国ごとに細かく異なる法律が存在します。
- 日本:食品衛生法、電気用品安全法(PSE)、家庭用品品質表示法
- 韓国:食品衛生法(MFDS)、KC認証、安全確認・安全認証、繊維表示
- 欧州:CE、REACH、RoHS
商品カテゴリーによって求められる基準は大きく違います。
20年間の現場で感じた核心は、
「商品を輸入する」=「その国の責任を背負う」ということです。
輸入者として名前を記す以上、事故・クレームが発生した際は、すべて自社が矢面に立ちます。
だからこそ、法令・検査・表示の理解は避けて通れない専門領域なのです。
2.多様な素材・用途ごとに“安全性の基準”が違う
私が扱ってきた商品は、以下のように非常に幅広いものでした。
● 食品に触れるもの
陶器、ガラス、ステンレス、樹脂、木製食器、使い捨て食器など
- 食品衛生法の溶出試験
- 耐熱温度の確認
- 材質表示が必須
● 子ども向け商品
幼児衣類、玩具、水遊び用品
- KC認証・有害物質検査
- 対象年齢表示
- 誤飲・窒息リスクの確認
● 電気用品
LED照明、加湿器、充電器、電動玩具など
- PSEマーク
- 定格表示
- 技術文書の保管義務
この「素材 × 用途 × 法規制」を組み合わせて判断する力は、机上では身につきません。
海外工場の生産工程、材料の特性、表示ラベルの作成まで一貫して扱ってこそ、商品安全のプロとしての視点が育ちます。
3.もっとも大切なのは、“表示”ではなく“表示の裏側”
表示ラベルは表向きの情報ですが、その背景には膨大な確認作業が存在します。
- 材質は本当に表示どおりか
- 耐熱・耐久試験をクリアしているか
- 有害物質が残っていないか
- 海外工場は工程管理を守っているか
- 表示に法令違反はないか
特に海外工場は必ずしも日本や韓国の規制を理解していません。
ラベルを作って貼るだけでは不十分で、
「技術根拠があるか」まで確認することが本当の品質保証です。
私は何度も“表示だけ整って中身が伴わない”製品を見てきました。
そのたびに学んだのは、
「表示とは信頼の証。表示は最後に貼る品質保証である」ということです。
4.トラブルの多くは“最初の確認不足”から起きる
輸出入の現場で起きる問題のほとんどは、後工程よりも最初の仕様確認の不足が原因です。
- 材質の誤解
- 試験の範囲漏れ
- 表示文言の不備
- 対象年齢の誤設定
- 輸入者名の欠落
- 耐熱・耐冷温度の記載漏れ
- カートン表記ミス
どれも一見小さなことですが、
輸入後の返品・回収は莫大なコストを生みます。
だからこそ私は、
「最初の確認に時間をかけるほうが、後のトラブルを100%減らす」
と常に心がけてきました。
この姿勢は今も変わりません。
5.輸出入の仕事は“法律+技術+品質+危機管理”の総合力
多くの人は、“貿易=書類仕事”と思いがちです。しかし実際は、
- 規制の理解
- 技術仕様の把握
- 生産工程の理解
- 海外工場との交渉
- 検査・試験報告書の確認
- 表示ラベルの作成
- クレーム対応
- リスクマネジメント
これらすべての知識と判断力を求められる、
高度で専門的な総合職です。
20年かけて身につく理由が、そこにあります。
6.商品安全は「人の安全」を守る仕事
輸入品を扱うということは、
見えないところで“誰かの生活を守る役割”を担うことでもあります。
- 子どもが安心して遊べる玩具
- 毎日使う調理器具
- 食卓に並ぶ食器
- 電気製品の安全性
どれも、もし事故が起きれば人の命や健康に影響します。
だからこそ私は、
「表示は売るための情報ではなく、安心の入口」
だと考えています。
これが、
20年の輸出入の現場で私が学んだ、商品安全と品質表示のプロとしての視点です。


コメント