キャラクターライセンスの仕事は、一見すると華やかですが、実際にはとても繊細で、ブランド価値や品質を守るための細かなルールが数多く存在します。私自身、これまでにディズニーやサンリオなどのグローバルIPに関わるプロジェクトを経験する中で、「韓国企業との契約ならではの注意点」を強く実感してきました。
この記事では、その実務経験をもとに、契約前に確認すべきポイントから、デザイン審査、100均向け商品の特別スキームまで、実務で本当に役立つ内容を整理してお伝えします。
1. 契約前に必ず確認すべきポイント
韓国企業とキャラクターライセンス契約を進める際は、まず次の3点を確認しておくことで、後のトラブルを大幅に防ぐことができます。
- 製造工場の品質レベル・実在性(工場監査が入るケースも)
- 販売チャネルと価格帯(ブランド毀損になり得るチャネルは不可)
- 財務健全性(MG:最低保証金を支払えるか)
2. 契約書で明確にすべき項目
キャラクターライセンスは、「契約書の細かさ」が運用トラブルを防ぐ最大のポイントです。特に次の項目は必須です。
- 最低保証(MG)とロイヤリティの条件
- 販売地域(Territory)と販売チャネル(Channel)の明確化
- デザイン審査プロセス(Concept → Design → Final Approval)
- 売上報告とロイヤリティ監査の義務
特にディズニーやサンリオなどのようなグローバルIPは、デザイン承認のプロセスが極めて厳格であり、韓国企業の「スピード感」と相性が合わない場合があります。そのため、スケジュールに承認リードタイムを明確に記載することが欠かせません。
3. 100均向け流通についての誤解と正しい理解
よく誤解されやすいのが「キャラクター商品は100均には出せない」という点です。正しくは次の通りです。
- 一般メーカーが100均に自由に流通させることはできない(原則不可)
- しかし、100均専任のライセンシー企業が別契約で供給しているケースが実務上存在する
つまり、「すべての100均流通が禁止」なのではなく、特定企業のみが許可される特別スキームがある、というのが正確な理解です。通常契約では100均流通は不可ですが、「専任ライセンシーがいる」という点がポイントになります。
4. 韓国企業と起こりやすいトラブルと対策
- デザインの無断改変・バリエーション追加 → 契約に「未承認変更の禁止」とペナルティを明記
- MG(最低保証)が払えない問題 → 初年度MGを低く設定し、半年レビュー制度を入れる
- 越境ECによるリージョン違反 → 出荷先リストの提出義務・越境ECは事前承認制に
- 承認スケジュールを守らない → 週次ミーティングで進行管理を行う
5. ディズニー・サンリオなどグローバルIPに共通する“特有の基準”
グローバルIPで共通しているのは、品質とブランドイメージの一貫性が最優先であるということです。
- 値引き販売や不適切チャネルへの流通禁止
- SNS投稿や広告物も事前承認が必須
- 安全規格(KC認証など)の遵守
- 不良発生時は即時報告が義務
6. 韓国企業と上手く協業するためのポイント
韓国企業はスピード感が高く、決断も早いという特徴があります。この文化の違いを理解し、次の3点を押さえておくと成功率が上がります。
- スケジュールを最初に明確化し、承認リードタイムを共有する
- 初回1ヶ月で「何がOK/NGか」をはっきり伝える
- 週1回の短いオンライン打合せを設ける
まとめ
韓国企業とのキャラクターライセンス契約は、スピード感と審査の厳格さのギャップから、誤解やトラブルが起こりやすい分野です。しかし、契約段階での“細かい取り決め”と、運用段階での“定期モニタリング”を徹底すれば、お互いにとって非常に良いパートナーシップを築くことができます。
100均向け商品についても、一般メーカー不可・専任ライセンシーありという業界特有の構造を理解することで、より正しい契約判断ができるようになります。


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