【貿易×AI】実務歴20年のプロが検証。ChatGPTでメール・書類作成はどこまで楽になるか?

Work & Insight

「AIで、貿易の仕事はどこまで楽になるのか?」
インボイス作成、船積み書類のチェック、クレーム対応、メール…。貿易の現場は、今日も「時間との戦い」です。

この記事では、貿易実務歴20年以上の筆者が、実際の業務の中でAI(ChatGPT)を使い、どの業務がどれくらい効率化できたのかを「実験記録」としてまとめました。
良かったところだけでなく、「ここはAI任せにすると危ない」というポイントも正直に書いています。


1. AIで本当に効率化できた業務

① メールの下書き作成(時間短縮効果:体感70%)

最も効果を感じたのが、メールの下書きです。特に、

  • 支払い催促(Payment reminder)
  • 船積みスケジュール変更の連絡
  • クレーム対応の一次返信
  • フォローアップの礼状メール

このあたりは、パターンは似ているのに、毎回ゼロから書くと地味に時間がかかる作業です。

Before:1通あたり 10〜15分
After:AIで下書き → 2〜3分で修正して送信

AIにお願いするときは、例えばこんな指示をします。

・「支払い遅延に対して、柔らかめだけど、はっきりと期日を伝えるメール」
・「長年の取引先に対して、感謝を込めたフォローアップメール」

トーン(丁寧/カジュアル/事務的)を指定すると、かなり実務レベルの文面が返ってきます。
最終チェックと微調整は人間の仕事ですが、ゼロから文章をひねり出すストレスが激減しました。

② インボイス・梱包明細のフォーマット作成

輸出入書類で地味に時間がかかるのが、レイアウトの調整や表形式への整形です。

  • 品名の英語表記を統一したい
  • 数量・単価・金額を、Excelに貼れる形のテーブルにしたい
  • Net / Gross Weight、梱包数、原産国などを抜け漏れなく並べたい

こういった作業も、テキストで情報を渡すと、AIが

  • 列名付きの表形式(Invoice用)
  • 梱包明細書(Packing List)用の項目レイアウト

などに一瞬で整えてくれます。
特に、複数国向けに表記を変えるとき(EU向け・アジア向けなど)には、コピー&修正で済むのでかなり楽になりました。

③ クレーム報告・原因分析の文章化

不良発生や納期遅延など、貿易の現場で避けられないのがクレームです。
原因調査は人が行うとしても、報告書の「文章化」はAIが得意な分野でした。

  • 現象の説明
  • 原因の仮説
  • 再発防止策

などを箇条書きで渡すと、取引先にそのまま提出できるレベルの冷静で客観的な文章にまとめてくれます。
感情が入りやすい場面だからこそ、AIの「淡々とした文章」が意外と役に立ちました。


2. AI任せにすると危険だと感じた業務

一方で、「ここをAIに任せきりにするのは危ない」と感じた部分も、はっきりありました。

① 船積み書類の最終チェック

BLとInvoice、Packing Listの数値照合、積み地・仕向地・Consignee・Notify Party の確認などは、AIにサポートさせることもできますが、最終判断は人間が必須です。

  • 危険品や特殊貨物が混ざっているケース
  • 禁輸・制裁関連の要注意案件
  • 通関業者からのイレギュラーな問い合わせ対応

こういったケースは、会社ごとのルールや相手国の慣習も絡むため、
「一般論しか知らないAI」ではカバーしきれない部分が多くあります。

② 契約書の法的解釈・リスク判断

売買契約書やライセンス契約の翻訳・要約は、AIの得意分野です。
しかし、

  • この条文が自社にとってどんなリスクになるか
  • この損害賠償条項は、業界水準として妥当か
  • このインコタームズの選択で、本当に大丈夫か

といった「判断」や「交渉戦略」は、AIではなく人の仕事です。
あくまで「下調べ」「たたき台作成」までがAIの守備範囲だと感じました。


3. AIは貿易担当者の仕事を奪うのか?

よく聞かれる質問ですが、現時点での答えは「No」だと感じています。

むしろ、AIをうまく使える貿易担当者の価値は、これからのほうが高くなると考えています。

  • AIに任せられる仕事:定型的・反復的・形式的な部分
  • 人が担うべき仕事:判断・交渉・例外処理・信頼関係づくり

AIは「有能な新人アシスタント」。
最終決裁と責任は、これからも人間の役割です。

AIを恐れるよりも、「どうやって自分の仕事をAIに手伝わせるか」を考えた人から、仕事の質とスピードが変わっていく──そんな感覚があります。


4. 実験して分かった、AI活用のコツ

最後に、今回の実験で「これはやると効果が高い」と感じたポイントをまとめます。

  • 指示は短くなく、「背景」もセットで伝える
    (何の目的で、誰に対して、どんな立場で書くのか)
  • テンプレはAIに作らせ、自社用に微調整して保存
    (2回目以降が一気に楽になります)
  • メールは「トーン」を必ず指定する
    (丁寧/事務的/フレンドリーなど)
  • BL・Invoice・契約書の最終チェックは必ず人が行う
  • AIで作ったフォーマットはファイル管理ルールに組み込み、再利用する

まとめ:AIは貿易実務の「相棒」になる

今回の実験を通して一番強く感じたのは、
AIは「仕事を奪う存在」ではなく、「仕事を早く終わらせてくれる相棒」だということです。

貿易実務は、これからも人の判断と経験が必要な仕事ですが、
その一部をAIに手伝ってもらうことで、

  • 書類に追われる時間を減らす
  • ミスを減らす
  • 交渉・企画・戦略に、より多くの時間を使う

という方向にシフトできると感じています。

今はまだ、「AIを使える人」と「ほとんど使っていない人」の差が大きい段階です。
だからこそ、少しずつでも試してみる人が、一歩先を行けるのかもしれません。

「こんな使い方も試してほしい」などあれば、ぜひコメントで教えてください。

今後も、AI×貿易の実験記録を、少しずつ更新していきたいと思います。

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