二上山と大津皇子 ― 夕焼けに浮かぶ「双子山」に想う

魂と向き合う

窓の向こうの双子山 ― 二上山と大津皇子に寄せて

冷房がしっかり効いた部屋で、ふと夏の音を聞きたくなり、窓を少しだけ開けてみた。
外からは、木々と蝉と風の音が混ざり合って届いてくる。

今日、8月15日は韓国と日本ではそれぞれ全く異なる意味を持つ日。
休日でもあり、体調も少し崩していた私は、自宅で静かに過ごしていた。

西側の窓から見える山の稜線を眺めていると、ふと心がとまった。
そこには、寄り添うように並ぶ二つの山。地形的には双子山ではないのに、私にはどうしても「双子」に見えてしまう。
――おそらく、私自身が双子の娘を持つ母だからかもしれない。


自宅の窓から見える私の双子山の夕焼け

二上山と大津皇子 ― 飛鳥の記憶

この双子のような山を見ているうちに、ふと思い出したのが、奈良の二上山だった。
10代のころ、『天翔る白日 ― 小説大津皇子』を読んで以来、心のどこかにその名が残っていた。

大津皇子と二上山
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二上山は、古代より「雄岳」と「雌岳」という二つの峰を持つ山。
そこには悲劇の皇子・大津皇子が葬られたという伝承が残る。
実姉である大伯皇女が詠んだ万葉集の挽歌は、千年を経てもなお胸を打つ。

うつそみの人なる我や明日よりは二上山を弟背とわが見む

『この世の人である私は、明日からは二上山をわが弟と見ようか。』

― 万葉集・大伯皇女

“双”というかたちに宿るもの

双子、双山、陰と陽。
どれも対になりながら、補い合い、調和して存在するもの。
私にとっての「双子山」は、日常の中にある静かな祈りの象徴のようだ。

夕暮れに染まるその姿を見ていると、時間の流れが少しだけ遡るような気がした。
飛鳥の昔と今が、ひとつの窓辺で重なり合う。

夏の音とともに、静かに過ぎていく一日。
心の奥で、何かがゆっくりとつながっていくのを感じながら。


2025年8月15日 自宅にて

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